英検に6級・7級が新設される。対象は実質的に小学生以下になるはずだ。だが、英語がまだ言語として育つ途中の時期に、レベル測定を細分化してまでテスト化を進める必要がどこまであるのか疑問が残る。
英検5級より下を作る必要性はあるのか
英検5級は「初歩的」と言われることが多いが、実際には十分に低い難易度で、自然なインプットが続いている子どもなら無理なく到達できる。さらに下に6級・7級を細かく区切ると、どうしても次のような帰結を招きやすい。
- 覚えた単語数でレベルを測る評価軸が強まる
- ワークやドリルのような練習が増える
- テストのための学習が早期化する
英語力の育ち方は本来、語彙の数だけで決まるものではない。むしろ意味のキャッチボールが成立する経験のほうが重要だ。それにもかかわらず「測る枠組み」が先に来ると、英語が「科目」として扱われやすくなる。
低年齢期に必要なのは、テストではなく「言語経験」
小学生より前の時期は英語の基盤が育つ最も繊細なフェーズだ。
- 音のリズムに慣れること
- ジェスチャーや表情と結びついた理解
- 文脈から意味をつかむ力
- 大人とのやり取りから生まれる双方向的な経験
この段階で必要なのは暗記や正解・不正解ではなく、「伝わった」「反応が返ってきた」「意味が共有できた」という積み重ねだ。英語で声をかけられて日本語で返しても、きちんと意味が通じる経験は、早期の言語育ちにとって極めて価値が高い。こうした経験はテストでは測れない。
“早期英語教育”への懸念と新設級の地続き感
世の中でよく言われる早期英語教育への懸念は、単に「早い」という問題ではない。主に次の三点に集約される。
- 教科化・スキル化を低年齢に押し下げること
- 子ども主体より大人の管理が強まること
- 「力をつける」より「測る」が目的化すること
英検6級・7級の新設は、この構図とよく似ている。特にテストという枠が早期に入ると、英語との向き合い方が技能チェック中心に変わりやすい。
言語として育てたい時期だからこそ、テストは急がない
小学生以下の時期は、英語を「教科」ではなく「言語」として扱うほうが圧倒的に伸びる。ただし、歌やアルファベット遊びだけで十分という単純化にも注意が必要だ。英語は生活の中で意味と結びついた瞬間が増えるほど育つ。
基礎的な接触量が積み上がれば、必要な時に英検5級・4級へ自然に手が届く。低年齢では、その基盤づくりを最優先にする姿勢が必要だ。
今回の新設級は「より下のレベルまで測る」という意図が背景にあるだろうが、その流れが低年齢の英語を早期に教科化する方向に働くなら、家庭や教育現場での慎重な検討が必要になる。


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