ある日、長男から「計算するときは英語で考えて、それから日本語に直している」と聞いて驚いた。たぶん次男も同じ傾向がある。おうち英語を続けてきたが、算数の思考にまで英語が入り込むとは想像していなかった。
きっかけはナンバーブロックス
未就学児の頃から「Numberblocks(ナンバーブロックス)」をよく見ていた。数字がキャラクターとして登場し、映像と音で数量や関係性を表すのが特徴だ。
- 「2×2」だけでなく「2×2×2」のように立体(キューブ)の掛け算も登場する
- 保育園児の段階で自然に3乗を理解してしまった
- 次男は公文では先取りをしていなかったが、映像と音の組み合わせで掛け算の感覚をつかんでいた
- 九九を日本語で暗唱できなくても、計算そのものはできるようになっていた
ナンバーブロックスはビジュアルで数量感覚が身につき、数のイメージが自然に浮かぶ。この力と九九の暗唱を両方マスターできれば、算数の基盤としてはかなり強いと思っている。
言語と暗算速度の研究
数の言い方や表記の体系は、基礎的な数概念の形成や処理速度に影響すると言われている。研究の中では次のような知見がある。
- 日本語や中国語は規則的で短い
位取り(十・百・千)を明示する構造なので桁の理解がしやすい。 - Miuraらの比較研究
日本語や中国語の子供は英語話者より早く桁の概念(place value)を理解した。 - 中国語話者と英語話者の比較
中国語話者は標準化テストで速さ・正確さに優れる傾向がある。 - 言語構造の影響
数の比較や桁の処理では、言語の構造が反応時間に影響することがある。 - 英語の特徴
“eleven”“twelve” のように不規則で音も長いため、処理コストが増えるとされる。
日本語と英語の数字の扱いの違い
観点 | 日本語 | 英語 | 子供の反応・メリット |
---|---|---|---|
桁の区切り | 4桁ごと(万・億) | 3桁ごと(thousand, million) | 英語はカンマの位置と一致するので、大きな数字を読むのが早い |
数字の言い方 | 規則的で短い(十・百・千…) | 不規則で長め(eleven, twelveなど) | 日本語は暗算に有利とされる研究あり |
学習スタイル | 九九など暗唱が中心 | 暗唱文化は弱い | 九九は日本語が強いが、英語ではビジュアルや歌で感覚的に理解する場面が多い |
我が家の観察
実際のところ、長男も次男も暗算に困っている様子はない。むしろ強いと感じる。英語で考えて日本語に直すプロセスがあっても、スピードが落ちている印象はない。算数の概念や用語を英語で処理すること自体が自然になっているように見える。
英語の桁区切りはメリット
大きな数字を読むスピード
英語では3桁ごとに区切って数える(thousand, million…)。これはカンマの位置と一致しているので、数字をパッと読むときに迷わない。子供たちは大きな数字を見ても正しく、しかも素早く読めてしまう。その速さには親として驚かされる。
ビジネスの世界は3桁区切りが主流
自分自身を振り返ると、社会人になってから「60千円」「45百万円」といった表記に苦労した経験がある。ゼロを3つカットして「千円単位」で表記するケースや、単位すら書かれずに暗黙で省略される数字も多かった。日本語の「一十百千万」の4桁区切りに慣れていたため、ビジネス数字が頭に入ってこないことが多かった。
一方で、国際的なビジネスや金融の世界では、英語と同じ「3桁区切り+カンマ」が基本。息子たちは最初からこの方式に馴染んでいるので、将来的に数字の扱いにスムーズに入っていけるのではないかと思う。
算数を英語で考えることのメリットとデメリット
算数を英語で考えるようになった子供たちの姿を見て、親としては驚きと同時に面白さを感じている。ここまでの観察をまとめると、次のようなメリットとデメリットがあると感じる。
メリット
- ナンバーブロックスによって数量感覚がイメージとして身についている
- 英語で処理することで、大きな数字を読むスピードが速い
- 国際的に主流の「3桁区切り」に自然に馴染んでいるため、将来のビジネス数字に強い可能性がある
デメリット
- 日本語の九九暗唱が弱く、日本語で定型的に説明する力はまだ十分ではない
- 英語から日本語に直すプロセスがあるため、場面によっては切り替えに時間がかかる可能性がある
とはいえ、総合的には「算数を楽しんでいる」ことが一番の財産だと思う。言語の違いは補い合えるし、両方の良さを取り入れながら伸びていけばよい。算数を英語で考えるというユニークな成長の形を、これからも見守っていきたい。
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